第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズヴェルトの専用車がトヨタ博物館にある。1939年式「パッカードトゥエルブ」だ。パッカードは航空用エンジン開発でも知られ、第一次世界大戦中に、V型12気筒航空機エンジンを量産したメーカー。1920年代半ばに生産したクルマが大成功、キャデラックを抜き高級車の最高峰に。大統領専用車は12気筒エンジンとなって「トゥエルブ」と言われています。
パッカードトゥエルブは、ローリング・トゥエンティーズ の狂乱の20年代には、ルドルフ・ヴァレンティノら映画スターやヘンリー・ルースら大富豪が愛用、またサウジアラビアやインド、スウェーデン、ノルウェー、エジプトほかの政府公用車や貴賓車としても用いられていました。
またソビエト連邦のスターリンもパッカードを愛用。スターリンとの仲介を取り持ったのがフランクリン・ルーズヴェルト大統領だったと言います。
1939年式パッカードの時代は、まだアメリカは戦争には孤立主義でした。そのため大統領専用車ですがまだ幌がみられます。
いざ走行時には、厚さ3cmの極厚の防弾ガラスが後部座席に回され大統領を銃撃から守ります。クルマ全体は装甲車並みに強靭です。
フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ゴッドファーザー』(1972)に登場した「パッカード・スーパーエイト ワン-エイティ 1941年製」。
ルーズヴェルト大統領専用車の「パッカード」の僅か2年後の型式パッカードでした。フロント部分」を見ると、ライトの位置が大きく変更され、前輪上部のボディーの高さがすっかり変わり、スマートになっています。
画像は、Green Light – Hollywood Seriesのダイキャストモデルから
キャデラック・エルドラド・ビアリッツ (1959)のジェット戦闘機の尾翼をおもわせる先進的なテールフィンデザイン。
航空&宇宙への憧れがクルマのエクステリアデザインへ摂り入れられ、やがてこのエルドラドでピークを迎えた。
キャデラックもまた1920年代、30年代にかけ歴代アメリカ大統領や世界各国の王侯貴族に愛用された。ベーブ・ルースやアル・カポネも虜に。キャデラックはとにかく先取性があるクルマで、世界初のV型16気筒エンジン、パワーステアリング、ヘッドランプの自動調光システム、エア・コンディショナー、シンクロメッシュ・ギアボックス、デュアルヘッドランプなど近代自動車の技術革新が数多くなされ、その後ヨーロッパや日本の自動車会社がその最新技術を相次いで取り込んでいくことに。
あらためて驚くのは、すでに1950年代にクルーズコントロールやパワーウィンドウ&パワートップ(電動オープントップ)等の装備もまた採用されていたことです。
全長5m70cm余もあるロングボデイー。テールフィンはロッキードP-38戦闘機がモチーフになっているという。テールフィンは1948年にキャデラックが初採用。1959年のモデルでテールフィンは最高潮に。
トヨタ博物館の平田さんもテールフィンのことになると話が弾んだ。 好景気に沸いた50年代のアメリカ自動車文化のアイコンの一つになったクルマである。