現在、長久手市・杁ヶ池公園駅近くの「名都美術館」で日本画家・堀文子氏の展覧会「旅する堀文子 スケッチに刻まれた人生」展が開かれています。”花の画家”として広く愛されている堀文子氏没後5周年企画の第二弾、その第Ⅱ期 の展覧会です。
堀文子氏と名都美術館とのつながりは長く深く、名都美術館での最初の展覧会は1994年、ちょうど30年前となります。また500点以上と日本で最も多く堀文子氏のスケッチを所蔵している美術館でもあります。本画も愛知県下で一番多く、国内でも有数の所蔵を誇っています。
第Ⅰ期に引き続き、美術館の学芸課長・鬼頭美奈子さんに堀文子氏の絵画と生き方の魅力、今回の展示の見所を伺いました。
*尚、画像データ(一部除く)は、堀文子展覧会「旅する堀文子」第Ⅱ期 終了時の9月29日までの掲載となります。
エントランスから展示室までの間で、一気に空気と光が変わります。側面に掛けられているのは堀文子氏のポートレイト写真
学芸員 鬼頭さんによる展覧会案内
名都美術館の学芸課長・鬼頭美奈子さんに「旅する堀文子」展覧会 第二期の見所についてお話しを伺いました。
「第Ⅰ期では、「花」のスケッチをたくさんご紹介致しましたが、第Ⅱ期では、<一所不住>のテーマを掲げた100余年の生涯にわたる作品を紹介致します。生家の椿の花、戦後に移り住んだ青山の焼け野原で芽吹いた藤の花、50歳目前に移り住んだ大磯では自然を豊かに見つめ作品に反映させました。軽井沢にアトリエを構えたのは60歳で、移り行く季節を描きだしました。
そして日本のバブル期の喧騒を逃れイタリアのアレッツォ郊外にアトリエを構えています。最晩年には再び大磯に戻ってきます。そこで500年余の樹齢をもつホルトの木の伐採に反対し、私財を投じて木を救っています。
どうぞ堀文子の数々の作品の神髄をご覧ください」 学芸員 鬼頭美奈子
「上村松園の美人画」
日本画家・上村松園の気品あふれる美人画が併せて展示されています。日本画に独自の境地を開いた上村松園のこれら美人画は名都美術館の所蔵品で、展覧会を多面的で奥行きのある展示構成にしています。女性が社会で生きるにはあまりに厳しい時代、迎合することのないその独自の絵画世界を描き出しています。堀文子氏34歳の時(1952年)、上村松園賞を受賞しています。
新収蔵品1 「アロエの森」のこと
名都美術館による堀文子作品の新たな収蔵品です。昭和15年制作の堀文子22歳頃の作品「アロエの森」です。堀文子氏は若い頃より従来の日本画と一線を画した表現をめざしていました。
その背景に、女子美術専門学校(現・女子美術大学)卒業後に「幼虫」を記録する仕事に携わったことと、東京帝国大学農学部で2年にわたって農作物の記録係りをしたことが影響してたことがあげられ、「観察」することが新境地の開拓につながっていったとのことです。
第Ⅱ期 の展覧会の注目点! ”智慧”をテーマにしたコーナー
「スケッチをメインにした作品からは、そこに映し出された堀文子の精神性や神髄が見えてきます。なかでもポイントとなるのは智慧をテーマにしたコーナーです!
マヤ遺跡やエジプト文明から着想を得たモチーフ、昆虫や微生物(プランクトン)の小さな生命の賢く生きているさまに強さや喜びを感じて筆に託しています。そうした作品を通し堀文子を立体的に紹介できる企画になっています」 学芸員 鬼頭美奈子
各展示コーナーに設けられた可愛らしい「ここに注目!」カード。作品点数も多いので学芸員の注目ポイントをフォローしながら展示室を巡るとよいでしょう。
2階の展示室から1階フロアへ
見る位置、角度、高低によって表情を変える枯山水の庭園。この日本庭園は名都美術館をシンボライズする存在です。