長久手市東部、モリコロパーク・ジブリパークの森に連なる三ヶ峯地区の丘陵に入ると、黒色の艶のいい大きな牛が草を食む姿に出会うことがあります。長久手市唯一の牧場「川長牧場」の放牧地です。
日が燦々とそそぐ丘陵には、県下でその名を知られる近藤バラ園やブルーベリー狩り農園のT & A berry、また芋掘り体験ができる農園(結の会)もあり体験型穴場になっています。
なぜこの丘陵地に和牛が放牧されるようになったのか。父親の代から続いたホルスタイン種の酪農から大転換した理由がありました。
この丘陵の放牧地に初めて2頭の和牛が導入されたのは、「愛・地球博」が開催された2005年のこと。それはオーナー川本健治さんならではの「体験イベント」の構想からでした。
放牧は和牛が好む草が生える季節にわたって間断的に行われています。今年は10月末頃まで放牧されていました
放牧は地域の方への「農」や「畜産」の理解促進にもつながっています
川長牧場の放牧地は近場に5カ所、計約4.5ヘクタール。食べる草を整え、しばしば撒いた種の草を育てながら、牛がなるべくストレスを軽減(運動量を増加し難産軽減)できるように移動させています
今年も梅雨明け以降の猛暑で、本来暑さ寒さに強い牛もさすが暑さにまいってしまうため、なるべく日陰のある場所や雑木林の中に移動させたりしているとのこと
2013年に和牛の繁殖母牛が50頭となった段階で、父親の代から続いたホルスタイン種の酪農は辞め、「和牛繁殖経営」へと舵を切ったとのことです
先立つ2005年に和牛を2頭を導入した経緯として、川本さんが立ち上げた障害者の子供をもつ父親による有志の会(1992年設立)の活動に「農」に触れ合う体験イベントの実施が契機になっています
地域住民にとっての体験は、川本さんにとっては「和牛を育てることの面白さを再認識」する機会になったといいます
牧草地から車で数分のところにある川長牧場の厩舎。県道215号田籾名古屋線より少し入ったところ
放牧地がある丘陵の麓にある川長牧場の厩舎へ。年季の入った重い鉄扉を開けると、、
天井の明かりとりから陽光が入り牛舎内は柔らかな明りで満たされている。不思議な別世界にいるような感覚に陥る
昭和の時代には、長久手の酪農家は川本さんを入れ6軒あったとのこと。
酪農には膨大な量のきれいな水と絶え間ない食料が必要とされる。糞尿処理のための設備投資も欠かせずコストに見合わなくなり、川本さん以外全員廃業された。川本さんも岐路に立たされました
11月に入るとすべての母牛は産休のため農牧地から牛舎へと戻ってきています
川長牧場オーナーの川本健治さん
この映像の途中、小さな赤ちゃん牛が見えます。母牛が隣にいます