常に新しい日本画を追求し続けた日本画家・堂本印象の展覧会が、「名都美術館」で開催されています
現在、「堂本印象とは何者か」展の後期(〜6月8日まで)が開催中ですが、この後期には堂本印象の傑作「木華開耶媛(このはなさくやひめ」や「太子降誕」などが展じられまたとない展覧会になっています
また展示には1950年代の海外遊歴で華麗に変転し日本画壇を刺激、モダンな造形感覚で生み出した傑作作品「交響」もあり、その変遷ぶりに驚かされます。その感性の振幅さが後に襖絵など日本間装飾を革新していきます
日本人の美意識が世界から再注目される中、堂本印象の革新され続ける日本画とその原点をたしかめてみましょう
尚、「Nagakute Times」掲載の今回の堂本印象の作品の掲載は、会期中までとなっております
会期終了後、作品画像は、<著作権>の関係からすべて削除となります
名都美術館:中庭に面したホール
大壁面に掲げられているのは京都にある堂本印象美術館の建築。美術館本館と敷地内にある「山のアトリエ」が、2025年3月、国の登録有形文化財に登録されました
展示室に足をすすめると瞬時に堂本印象の世界へと没入して行きます
現在開催中の後期には、堂本印象美術館でもほとんど外で展じられることがない中核的作品を数多く鑑賞することができます
「女人出定」昭和13年(1938)
無我の境地にある女性。ブッダからの促しで文殊菩薩が女人の周りを三度回って覚醒を促そうとする逸話
堂本印象《乳の願い》大正13年(1924)京都府立堂本印象美術館
堂本印象《木華開耶媛》昭和4年(1929)京都府立堂本印象美術館
堂本印象は自身の妹をモデルにして「木華開耶媛」を描いたとのこと
「木華開耶媛」=「木花之開耶姫(このはなさくやひめ)」は、富士山の女神、桜の女神、酒の女神、機織女、巫女神と多面的な属性をもつ神です
長久手市にある石作神社の合祀祭神の一柱に「木花之開耶姫」が祀られています
堂本印象《太子降誕》昭和22年(1947)京都府立堂本印象美術館
1970年大阪万博・万国博ホール緞帳 「手をつなぐ」を制作
堂本印象が制作した」「万国博ホール緞帳 手をつなぐ」の絵画の原画
画像出店元:EXPO’70パビリオン開館3周年記念 日本の万国博より
堂本印象が制作した東京・浅草寺本堂である観音堂の天井画
左右が「天人之図」(縦6.4m×横4.9m)昭和31年 65歳
中央の絵は川端龍子の画「龍之図」
天井絵は畳約19畳もある
「栄光の聖母マリア」聖マリア大聖堂(大阪)
昭和38年、堂本印象が72歳の時に制作した巨大な日本画による壁画である
左右に堂本印象画の「ガラシア夫人の最後」と「ルソン行の高山右近」の壁画も飾られる
この功績によりローマ法皇(ヨハネス23世)からシルベストロ文化第一勲章を受ける
画像引用元:壁画 聖マリア大聖堂
2階展示室へ
戦後1952年の渡欧を経て、人物画、仏画、花鳥画、風景画など日本の伝統的モチーフを描いてきた堂本印象の画風は大変貌しますます
2階展示室には大変貌した堂本印象の抽象画やモダンアートを中心に展示されています
堂本印象《交響》昭和36年(1961)京都府立堂本印象美術館
一流デザイナーにも刺激を与えていた堂本印象
昭和27年(1962)から堂本印象は約半年間にわたって、イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、スイスなどを遊歴した時の旅行記『美の跫音』掲載の美しいモノクロームの挿絵
堂本印象《メトロ》昭和28年(1953)京都府立堂本印象美術館
メトロに乗車する人々の目は黒く虚路で誰の視線も共有されることはない。中央の帽子を被った男性の手には「ARTS(芸術)」の文字がみえる。堂本ならではのエスプリ
具象的絵画から幾何学的構成へと新たな境地に向かった作品「生活」(昭和30年 1955)
黒く塗られた矩形は集合住宅の窓。そこは希望に満ちた生活ではなく孤独感に陥る場所になるのでないかと堂本印象は疑惑を感じ描かれた
左の作品は、ヨーロッパ各地を移動する民族ロマの占い師と悩む人の表情を印象的に描いた作品「疑惑」昭和29年(1954)
どちらも閉じ込められたような黒い矩形の空間がなんとも印象的
「新しい水」昭和30年(1955)名都美術館蔵
晩年は引っ越す度にこだわりの茶室を設けて精神性を養うために茶の湯の時間を楽しんだといいます。画塾においても「精神修養に資する」と塾生たちに茶会に参加するよう説いていたとのこと
京洛名紳帖 昭和5年(1930)
松尾芭蕉、謝蕪村、池大雅、一休宗純ら京都の歴史に名を刻む人物10名を取り上げた作品
人柄と情景が巧みに織りなされた情緒溢れる小品
京都府立堂本印象美術館サイト – 展覧会情報やコレクション、美術館について
昭和41年(1966)開館、平成4年(1992)府立として再開館。平成29年(2017)、創立50周年を記念して大規模改修がおこなわれています
美術館本館と敷地内にある「山のアトリエ」が、2025年3月、国の登録有形文化財に登録されました