「長久手市平成こども塾」は、モリコロパークとジブリパークのある尾張東部丘陵エリアにあります。「里山の豊かな環境を生かした体験活動による、子ども館の生きる力の育成」を基本理念とした体験版教育施設です。長久手の子どもたちが、「農」「自然」「暮らし」を四季を通じて肌感覚で体験する拠点になっています。
大都市圏に住む人には想像つかないかも知れませんが、長久手市にある6つの小学校の子どもたちが、学校の授業として6年間のあいだに3回、この「丸太の家」を訪れています。平成こども塾では、他にも年間200回ほど様々なプログラムを実施しています。
今回、8月2日に開催された「体感! 大地がやきものになる」の体験の取材を通して、「平成こども塾 丸太の家」の活動とその様子をお伝えします。
住民の環境教育の体験の場、里地里山におけるもう一つの教育施設として、子どもを対象とした拠点「丸太の家」が2006年4月に開館されました。
長久手市の小学生は、6年間の学校の授業で3回、「平成こども塾」を訪れています。
「平成こども塾」は、1970年代からはじまった長久手の西部地区の区画整理事業部よる都市化に対し、町がバランスよく発展するための未来ヴィジョンとして構想されたのがはじまりです。
とくに西部、南部地区の新住民の子どもたちに、里山や田園地帯が広がり昔の環境が色濃く残る東部地区を訪れ、豊かな自然と触れあいながら「自然の大切さ」や「生命の営み」「生活の知恵」を体験してもらおうというものです。
「平成こども塾 丸太の家」は、長久手市の都市部と農村地帯を結ぶ拠点に!
1999年に策定された長久手の第4次総合計画において、「豊かな自然とふれあいながらも都会的で便利な生活」の実現のために「農のある暮らし・農のあるまちづくり」を目指した「田園バレー構想」が推進されました。
「平成こども塾事業」は、その「田園バレー構想」の”子ども版”として実施されています。
この「田園バレー構想」は、1970年代からはじまった西部地区の区画整理事業部よる都市化に対し、町がバランスよく発展するための未来ヴィジョンとして構想されたのがはじまりです。ここ半世紀で都市化された市の西部・南部地域の主に「新住民」と、昔が残る東部の農村地域の「旧住民」の地域間、世代間の交流も目指されました。
「丸太の家」開館前の3年程前の2002年から、長久手町が会員を募集し「ようし隊」町人有志(後のサポーター)が、畑での耕作体験や自然観察を年8回程度実施されていたといいます。その活動が原型となって「「平成こども塾事業」のマスタープランが策定されました。
参照文献:「長久手町平成こども塾の歩み – 市政施行後の発展に向けて-」 沖 義裕 元長久手町職員
「平成こども塾」の中心施設である「丸太の家」。ひとたび屋内に入ると建物の名称そのままに大きな「丸太」で上り梁や桁などが頑丈に高く組み上げられている様子が目に飛び込んできます。
平成こども塾が管理・整備している「丸太の家」のすぐ近くにある竹林。
この奥には里山クラブが管理・整備している「木望(きぼう)の森」があります。このエリア一帯は、里山に田畑、小川や湿地、竹林や森が比較的昔のまま見られます。
「丸太の家」の周りに広がる竹林から切り出された竹。竹は里山の伝統的暮らしの中で様々に有用に用いられてきました。
「平成こども塾サポート隊」によるプログラム!
「丸太の家」のすぐ近くにある「こどもファーム」
「平成こども塾」には、「学校連携プログラム」や「平成こども塾プログラム」以外に、会員制の「専門プログラム」(外部の専門家に委託)と、市民ボランティアから結成されている「平成こども塾サポート隊」が企画・運営する4つのプログラムがあります。
「こどもファーム」は「平成こども塾サポート隊」による「会員制プログラム」の一環になっています。「平成こども塾サポート隊」のそれ以外のプログラムとしては、「書道・さし絵講習会」がある「創作プログラム」、「自然観察・体験プログラム」「サポート隊自主プログラム」があります。
令和6年度の「平成こども塾」の各種プログラムの確認、参加希望の方は、長久手市ホームページ「平成こども塾」から毎月のプログラムの確認、また応募もできます。
「丸太の家」内に展示されているクワガタ虫や蝉、トンボなど昆虫標本
「専門プログラム」も、「会員制」ですが、1年間を通して、ものづくりや自然観察などをより専門的に体験する専門的プログラムです。
「ものづくり系プログラム」と二つの「自然系プログラム」があります。
令和6年度(2024年)は、「ものづくり系プログラム」は「暮らしの道具作りと料理教室」。「自然系プログラム」には「ネイチャーゲーム」と「里山生きもの探検隊」があります。里山での体験を通して子どもたちの豊な感性や自分の力で課題を解決していく内なる力を育てることが目指されています。
「体感! 大地がやきものになる」プログラムを取材(前編)
「平成こども塾」のプログラムがどんな様子で催されているか以下レポート致します。
「丸太の家」内では子どもたちを迎える準備中
参加者一人一人に焼きもの作りの道具類が用意されています
長久手市にある愛知県立芸術大学の学生が講師となって分かりやすい説明がなされます。
長久手市にある愛知県立芸術大学の佐藤文子先生と、その研究室の皆さんが講師となり、この地域の特性や、焼きものづくりについて興味が湧くお話しをして頂きました。プログラムの講師は、佐藤文子先生はじめ、馬場優佳さん、上田春陽さん、野口陽平さん、石黒美咲さん(上の動画の講師)
講師のお話でも言及のあった古代の「東海湖」があったとされる古代の東海地方の地図。120~130万年程前、土地の隆起で「東海湖」は消滅。
面積は現在の琵琶湖のなんと6倍。古代の琵琶湖(古琵琶湖)と比較していかに巨大だったことがわかります。
瀬戸市や多治見市、常滑市で良質な粘土が採取され、日本の三大古窯として知られる「猿投古窯」もかつて存在していた「東海湖」があった場所に相当しています。
瀬戸市、常滑市はもちろん古代の長久手を含め、陶器の原料となる良質な粘土層があったことがみてとれます。
画像引用元:「濃尾・各務原地名文化研究会」サイトより
体験プログラムで用いる材料のもとなどが用意されていました。
採取体験! 近くにある粘土層の崖に皆で一緒に出かけます
「丸太の家」の前に広がる竹林を抜けて、徒歩で数分の所にある崖に粘土層が露出している場所へ皆で移動中
粘土層が露出している崖はこの手前にあります。子どもたちは崖から石化した粘土のかたまりを「丸太の家」へ持ち帰ることができました。
持ち帰った固形化した粘土を、子どもたち自ら砕いていきます。少し力を入れて叩くと粉々に割れていきます。
「大地がやきものになる」体験学習の第一歩が始まります。
子どもたちが外で採ってきた固形の粘土とは別に講師が用意していた2種類の粘土を丸め上からつぶしていきます。
子どもたちは初めての体験に目を輝かせて取り組んでいました。
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子どもたち自らの発想でやきものを創りあげていく様子をレポートします。