市内にある高校と芸術大学が「校歌」の譜面化を通じ、思いもよらない心あたたまる交流が生まれました。高校の同窓会で楽器が寄付された際に、楽器はあるのに「いつも歌っていた校歌の合奏を聞いたことがない」という話が出たのが契機だったといいます。
1955年(昭和30年)創立の県立長久手高校は、世界的にも知られるアコーディオニストで作曲家のcobaさんの出身校であるにもかかわらず、もともと生徒が校歌を斉唱する際、ピアノ伴奏譜だけしかなったといいます。
入学式、卒業式の際にも、吹奏楽部として校歌を演奏することができない時代が長く続きました。またピアノ伴奏が普通だと生徒もOBも感じていたので、誰も疑問すら持つことはなかったといいます。
ことのはじまりは2022年、高校の同窓会で楽器(テナーサックス)が吹奏楽部に寄付された際、ある同窓生の発した「校歌の合奏を聞いたことがないなあ」という一言がだったといいます。それまでにも式典の際に校歌の合奏がないな、と思う生徒もいたようですがそもそも「譜面」がないことは知らなかったかも知れない。
一つの楽器の寄贈は、有形無形に何かをもたらすようです。同校同窓会の副会長・山田卓次さんは、吹奏楽部もあり楽器もそろってきた、なんとか式典で「合奏」ができないものかと、同窓会役員一同の気持ちもそろい、同校の卒業生で県議の石井芳樹さんに相談を持ちかけました。
2023年春、長久手高校の校歌が譜面化され吹奏楽部の演奏によって披露されました。
母校を思う県議の石井芳樹さんから県芸大の岡田眞治教授へと一つの「想い」が手渡されました。市内に古くからある高校と大学。こうして学校をまたにかけたプロジェクトとなったのでした。
そして県芸大はその想いを受け入れ、校歌の譜面化を引き受け流ことになりました。校歌の編曲・譜面化は、同大学院音楽研究科博士後期課程で首席でもあった向井由依子さんが引き受け、譜面化が任されました。校歌のピアノ伴奏の映像を何度も聞き込み、吹奏楽部として皆で演奏でき、皆の歌声と「合奏」できる「譜面」ができあがりました。
美しい県芸大音楽学部棟。この建物の一階をステージに2023年春にこけら落としがあった「地形劇場」があり、企画演奏会や戸外演劇が催され市民にもよりオープンな場所となりそうだ。この写真の右手奥が演奏棟、室内楽ホールと続いている。