長久手市で「里山」といえば、東部・上郷とイメージしてしまいますが、じつは最も新しい「まち」である南部・市が洞エリアにも隠れたように「里山」があります
もと去る5月の新緑の日、長久手南部(市が洞地区)の丘陵に広がる「ほとぎの里緑地」にある「ほとぎの里交流館」を訪ねました。長久手は東部の「里山」はよく知られていますが、新しい住宅地が広がる南部にある「里山」とはどんな場所なのか
緑地の丘陵づたいのなかなか険しい場所もある高低差のある散策路は昨年巡ったことはありましたが、交流館とその奥に潜む「丁子田池」辺りは訪れたことはありませんでした。
「丁子田池」周囲に広がる緑地は、「ほとぎの里交流館」の奥にあり「交流館」が開いた日にしか中に入ることはできません。
「ほたるの里緑道」を南方に辿ると見えてくる「ほとぎの里交流館」
「ほとぎの里交流館」は、平成26年に設立された「一般社団法人 長久手みなみ里山クラブ」の拠点としてつくられました。「長久手みなみの人々が繋がり、まちがより良くなるために」と、地域住民主体によるエリアマネジメント活動の本拠地です
交流館の奥にある里山エリアは、通常は出入りすることが制限されています。それは「健全で持続可能な里山環境の維持管理」及び「生物の育成及び生育環境の維持管理・保全」が一般社団法人 長久手みなみ里山クラブの事業理念として求められているためです
また「自然を体感する機会の提供」と「住民参加と地域ニーズへの対応」もまた4つの事業理念のうちにあり、年間を通じて里山の自然環境や生きものに触れる機会が設けられ、また地域住民が参加し里山活動を共に行なっています
「ほとぎの里緑地」は、長久手南西部の端っこにあり、上の地図では左端の緑色部分に色づけされたエリア全体を指します
高低差のある緑地には展望デッキがあり南北を横断できる約1キロにわたる散策路があります
今回訪問したのは、「ほとぎの里緑地」の一番南側に位置し、「ほとぎの里交流館」のゲートを通ってその奥地にあたる場です
地図:「一般社団法人 長久手みなみ里山クラブ」事業概要パンフレットより引用
古くからある里山と新しくこのまちに住む人が共生する場所として
「奥の2つの田んぼでは、<田植え体験>ができる稲をつくっています。手前の池では「大賀蓮」の種を頂いてきまして移植し栽培しています
7月頃からピンク色の大きな花が咲き誇るんです
平家蛍と源氏蛍の幼虫を池に放流したのが今、蛹になっています。6月の初め頃には蛍が飛びはじめますよ」
大賀蓮(おおがはす)
大賀蓮が発見された千葉県にある千葉公園のハス
700超の輪が咲き誇ります
上の動画がお話しが出た「タイガ蓮」は、弥生時代以前の2000年以上前の千葉県の地層から出土した「古代ハス」のことです
発見されたのは1951年のことで、大賀一郎博士が出土された種から育てあげたことで「大賀(おおが)ハス」と呼ばれています。「世界最古の花・生命の復活」として1952年の米国の『Life』誌に紹介されました
大賀一郎博士の出身の岡山の後楽園や長野の善光寺大勧進前の池、佐賀県の吉野ヶ里歴史公園や出雲の荒神谷史跡公園など日本各地に公園などに移植されている
「ほとぎの里交流館」に展示されている平家蛍の蛹空 / ほとぎの里交流館へとつながる「ほたるの里緑道」
こちらが長久手の地図上では見かけてもなかなか見ることのない「丁子田池」
この里山で稲を脱穀する頃には、紅葉する木々のもと池の水面は鏡の様に透き通るとのことです
「左手は一番上は田んぼをつくってます。もち米を植えています。田植えから稲刈り、稲こきまで地元も子供たちにやってもらっています。翌年の2月に自分たちでつくった米で餅つきをしています
ため池である丁子田池には、ムツゴ、アメリカザリガニ、ヒキガエル、メダカが潜んでいます。5月にはオオシオカラトンボが飛び交います。じつはここでも外来種が増えてしまって網かごで駆除しています」
里山では希少な絶滅危惧種を守っています
「ここが長久手の南西のどん詰まりの場所であまり手がつけられてこなかったこともあり希少な生物や植物が残っています
蕾になっているのがササユりで、名古屋市でもここ長久手でもほぼ絶滅状態の花
その下に生えているのがこちらも絶滅危惧種のヒメカンアオイです」
絶滅危惧種の「ササユリ」と「ヒメカンアオイ」画像:共にWikipediaより
なんと天白川の源流がここに!
ここが天白川(植田川)の源流の一つ(他に猪高緑地や三ヶ峯地区)
「山際から水が流れ出してきてここに水が溜まっていく場所です。ここで絶滅危惧種のオワリサンショウウオが産卵をするところになっています
オワリサンショウウオはサンショウウオの中で一番最後に分類が確定した貴重なサンショウウオで、現在この山に50匹ほどおります。数が減らないようにしているんです」
丁子田池一帯は湧水が出る湿地になっていて貴重な場所とのこと
「ほとぎの里緑地」の里山は、長久手に6カ所設定された
「長久手市里山プラン」の先行モデルになっています
一般社団法人 長久手みなみ里山クラブの皆さん 右端が代表理事の村瀬宏さん
注意:「ほとぎの里緑地」には専用の駐車場は設けられていません。緑地は地元の住宅地にも面していますので、このエリアへ訪れる際は、なるべく市の交通機関(Nバス)などをご利用されることをお勧めします