長久手市にある「美術館」というと名東美術館以外、意外とパッと出てこないのではないでしょうか。もちろん県芸術大学の各種の展示やアート作品を立派に展示するカフェなどはありますが、「美術館」となるとすぐに思い浮かびません。もちろんご存知の市民もいらっしゃいますが、、。
このメキシコ美術館は、長久手東部に昭和元年(1926年)に生まれ育ち、瀬戸市で美術教師として美術教育運動に携わり、長年画家として活動された故伊藤高義画伯(2011年84歳で逝去)の長年のコレクションを展示したものです。ポサダの作品などは、愛知県下では名古屋市美術館の次に収蔵しているのではと言われ作品の貸し出しも多くあるようです。さてどんな美術館なのか一緒に見に行きましょう!
建物全体の正式名称は、「伊藤美術工房・タカヨシメキシコ美術館」となります。
取材:加藤正樹 中野淳 撮影:中野淳
正面建物が「メキシコ美術館」。左の建物は、伊藤高義画伯の娘さんの和田小織さんが講師を務める「伊藤美術工房」。
「メキシコ美術館」は、昨年までは直接来館しても見学できましたが、現在は来館にあたって電話予約が必要になります。入場無料。連絡先は中程のMap下と最後に記します。
美術館の入り口近くのスペースは、他の場所に保管されていた作品を館内で保管しています。そのためこちらの階段から一気に2階のフロアへと上がっていきます。この場所に立った瞬間から、メキシコの空気と配色感や意匠、そして意表をつくようなあったかみのある作品の存在感に圧倒されます。
壁を埋め尽くすメキシコの仮面の数々。地域の祭りで用いられてきたものばかり。一つ一つにストーリーがある。
壁には、シケイロス、タマヨ、ポサダらメキシコを代表する画家の作品も。現在、別の場所に保管されていた作品が一定期間、美術館内での保管しているとのこと。額装作品などが所狭しに置かれています。
現在、別の場所に保管されていた作品が美術館内で保管中。
美術館内にある伊藤高義先生の著作とメキシコ関連書籍(蔵書のほんの一部がこちらで見ることができる)。
伊藤高義画伯の作品。美術館横にある絵画・版画・織物・陶器教室(伊藤高義画伯の娘さんである講師・和田小織さんが営む)の正面の壁に懸けられてある。
All Photos by Atushi Nakano
*Map上 伊藤美術工房に「メキシコ美術館」は隣接しています。
館全体の正式名称は、「伊藤美術工房・タカヨシメキシコ美術館」
訪館電話予約要:090-3565-7902(和田まで 連絡時間 午前10時〜17時)
画家・伊藤高義画伯が描いた壁画(長久手中学校玄関入り口)
長久手中学校(岩作)には、伊藤高義画伯が描かれた「虹」と題された壁画があります。来賓玄関入り口にあるこの大きな壁画(幅500cm×縦250cm)は、1974年に長久手中学校の新校舎完成を記念したものです。
長久手中学校の在校生や卒業生は必ず目にするこの壁画には、「中学生が学ぶ姿、科学や芸術、体育が若者の未来の<虹の架け橋>になる」という伊藤高義画伯の思いが込められている。
壁画は、伊藤画伯の師であり約25年にわたって瀬戸で図画教師をしながら制作活動していた洋画家北川民次氏から教えを受けた「エッグテンペラ」で描かれています。北川民次氏は、メキシコ壁画運動、メキシコ絵画に強く影響を受け、児童美術の教育者でもありました。
シケイロスの壁画。町や建物のいたるところで壁画を見かけるメキシコでは、かつて文字が読めない者でも絵画を通してメッセージを伝えることができることから、メキシコ壁画運動、メキシコルネッサンスとも呼ばれました。
フリーダ・カーロの夫になるディエゴ・リベラら重要な多くの芸術家たちは巨大な壁画を描いてきたことで世界的に知られています。壁画には、「その建物の理想を描く」というフィロソフィーや思想が込められています。
長久手市立中学校の「壁画修復プロジェクト」
令和2年から3年にかけて、愛知県立芸術大学の文化財保存修復研究所の先生たちによって修復が行われています。
伊藤高義先生のこと
伊藤高義画伯
1926年(昭和元年)に長久手(当時は愛知郡長久手村)東部の大草に生まれる。1947年に愛知第一師範学校(現・愛知教育大学)美術専攻を卒業後、瀬戸市立第二中学校(現・瀬戸市立祖東中学校)に美術教師として赴任・画家としての活動は美術教育と並行してはじまります。
1948年、瀬戸で北川民次と出会い、子供の自由な創造を育むことを目指した美術教育運動「創造美育教育」やメキシコの絵画表現に触れ、自ら探究する旅へと向かいます。
メキシコと瀬戸をテーマにした油彩、水彩、版画を数多く発表。1977年、瀬戸市立長根小学校長を最後に教職を退き画業に専念。以降、年に数回メキシコに向い、帰国しては作品制作、展覧会への出品や個展の開催など精力的に制作活動を展開。1996年から二科会評議員。中部地方を代表する画家の一人です。
2013年 陶祖800年祭記念・瀬戸市美術館特別展で「伊藤髙義回顧展-瀬戸とメキシコへの愛-」が開催されています。
伊藤高義画伯 作品❶
作品「花売りの女」シリーズ / 作品「メキシコ布とカトレヤ」
作品「花売りの女」シリーズ / 作品「染付 メキシコ踊娘」
作品「青い瞳の女」 / 版画集「メキシコ・インディオの世界」
(上記の作品はメキシコ美術館で見ることはできません。ウェブサイトでの公開作品情報からのものとなります)
現在、「メキシコ美術館」は来館予約が事前に必要です。
連絡先:090-3565-7902(和田まで 連絡時間 午前10時〜17時)