長久手東部の里山エリアから永見寺の横道を辿ると、そこは大草丘陵の自然豊な谷津が迎えてくれます。3月下旬のある日、根尾谷淡墨桜の咲き具合を確かめに行ったところ丘陵の中程から白煙が上がっていました。白煙の正体は、<野焼き>による「作陶」でした。長久手出身の陶芸の講師で作家である樋口拓さんが、東京・関東から3年前に帰郷され、里山の土と景色のなかで、東京・新宿で開催する個展の作品作りの真っ最中でした。
燃え切った灰の中から様子をみながら作品を一つづつ取り出していきます。作品によって時間を掛けるものもあり、幾度も木片や木板などの廃材や枯れ葉をかけて燃やしていきます。2〜3時間かけ何度も何度も火炎や温度を調整していきます。
作品は発色材を混ぜ込んだ粘土を調合したもので一点一点つくられています。発色材が野焼きでどのように「窯変(ようへん)」するかは、コントロールしつつも火炎の中での偶然性に任せていきます。
「窯変」とは:一般的に陶磁器を焼く際に釉の色や光沢に予期しない変化が起こることを指します。 個体ごとに同じ模様にはならず、窯と釉薬が織りなす色の変化、色合いの不均一さが最大の魅力。
作品は
燃え切った灰の中から様子をみながら作品を一つづつ取り出していきます。作品によって時間を掛けるものもあり、幾度も木片や木板などの廃材や枯れ葉をかけて燃やしていきます。
籾殻(もみがら)を沢山入れたコンクリートの容器に、野焼きした作品を一度入れて数分蒸していきます。籾殻は高温の作品で炭化し真っ黒に。作品は最終段階でまるで<燻製>状態に晒され、一気に自然の温度で冷まされます。
閑話休題:「ここの里山の谷津は、京都・嵯峨野の景観に近いものを感じる」(樋口豊さん)
応援に駆けつけていた樋口拓氏の家族・樋口豊氏(ランドスケープアーキテクト、自然再生士、長久手市景観審議委員でもある)によると、東部里山のさらにここの場所は、尾張東部の中でも景観や、ほど良い広さといいひときわ素晴らしい谷津となっていて、ご出身の京都・嵯峨野にある麗しい景観と近いものを感じるといいます。
長久手西部の藤が丘に近いエリアに住んでいるがこの場所に来ると嵯峨野を思い出しとても馴染みやすく、この場所に思わぬ縁で巡り合ったことに驚いているとのこと。*谷津(やず)とは、川や水流、古の海などで侵食された谷状の独特の地形のこと。
樋口豊氏は、この大草丘陵の瀬戸市側、デジタルタワー近くに構築されたMARUWA Seto Factoryの優れたランドスケイプデザインを担当された。
野焼きが佳境に入ってきた
樋口拓さんと家族(奥さん)。写真は野焼き作陶する樋口拓さん中心のものを多く載せたが、実際には様々な面で奥さんとの二人三脚であることが伝わってきた。
籾殻で蒸され調子を整えられた作品を取り出す様子。緊張の一瞬である。
令和6年4月4日〜10日 京王百貨店・新宿店にて「樋口拓・個展」開催中!
野焼きの”自然窯”から出されたばかりの作品たちはまだ高温なので自然の空気と湿度の中に置かれる。表面温度が下がって来ると黒味が抜けてきて独特の風合いの作品が出現してきます!
*Google Mapの終点は、大草の永見寺になっています。ロケーションは、その永見寺の手前、大草公会堂の左側の道を奥に入っていき、永見寺を左手に見て里山の奥へと入っていきます。クルマは途中の杁ノ洞下池まで。そこからは徒歩になります。