住み心地ランキングなどで全国的にも常に上位にあげられる長久手市ですが、その理由の一つに独自の大胆な「区画整理」があったことは知られています
今回、「愛・地球博」(2005年)以降と、最も遅く「区画整理」が始まった「市が洞地区」が、とりわけ高い人気を誇るようになったかその背景を探ってみます
市が洞地区の開発で参考にされたのは、アメリカ・カリフォルニア州の「Village Homes」でした
この「ヴィレッジ・ホームズ」は、1970年代初期に環境に配慮した「持続可能なコミュニティ設計の先駆的なモデル」として評価されているまちでした
カリフォルニア州「Village Homes」とはどんなまちで、「市が洞地区」はどんなまちとなっていったか、<住み心地>とどんな関係性があるのかその背景を少しのぞいてみます

長湫南部公園
右手奥に見えるのは専門学校 愛知保健看護大学校
行政主導型の開発ではなかった「市が洞地区」
「地権者」たちによる組合方式による「区画整理」
まちづくりのコンセプトは「歩くことが楽しくなる”まち”」

21世紀に入ってから整備された「けやき通り」
この近くに2005年開催の「愛・地球博」の臨時駐車場ができ、地域開発の一つの起爆剤となった


現在のけやき通り
市が洞&周辺 ヒストリー
1975年 愛知淑徳大学開設
1981年 学校法人吉田学園「愛知たいよう幼稚園」設立 創立者:吉田一平氏)
1986年 社会福祉法人「愛知たいようの杜」設立
「ゴジカラ村」介護福祉の一大拠点へ(根嶽エリア)
1992年 「もりのようちえん」設立
1993年 介護福祉養成学校「愛知福祉学園」(後の「愛知総合看護福祉専門学校」)設立
1990年代半ば 地権者、町役場の職員が集まり未来のまちづくりを話し合う(宅地開発の契機)
行政主導でなく地権者たちによる組合方式で区画整理を行う
1998年 地権者約390人による「長湫南部土地区画整理組合」設立(理事長 水野健二氏)
歩くことが楽しくなるまちをコンセプト
100ヘクタールの土地に1880戸を設ける一大プロジェクト開始
カリフォルニアのVillage Homes視察
市が洞で特別養護老人ホームや幼稚園を運営する後の吉田一平市長も
土地区画整理事業で主導的立場を務める
2005年頃 戸建住宅の建設が相次ぐ(市外や市内の他エリアから子育て世代が移りすみ出す)
2010年 ユニクロ、竹の山から移転
2011年 名東温泉花しょうぶ開店(丁子田)
マクドナルド長久手南店
2016年 「長湫南部土地区画整理組合」解散
一般社団法人・長久手みなみ里山クラブ設立(ボランティアを募り緑を管理)
2021年 スーパー ピアゴパワー長久手南店開店(ラ・フーズコア長久手南店から全面改装)
2025年 スターバックスコーヒー長久手南けやき通り店オープン(片平)


21世紀に入って大きく変化した長久手南部の市が洞地区
写真:「長久手市誕生記念 航空写真集 わたしたちの街 長久手市」より 中日新聞社 2012年
左の写真は平成11年(1999年)撮影で、すでに左手の丁子田地区と手前の片平2丁目地区の街並みはありますが、まだアピタピアゴも、その横を通る現在の「けやき通り」も細い道だったことが分かります
愛知淑徳大学は1975年に長久手南部にすでに開設されていたので右手に大きなキャンパスが見えます
左奥の猪高緑地につながる私有林だった雑木林(現在の南部公園もそのなか)も含め大掛かりな区画整理、造成され宅地化だったことがわかります
市が洞地区の開発で参考にされたのは、アメリカ・カリフォルニア州の「Village Homes」
「ヴィレッジ・ホームズ」は、米国における1970年代初期、環境に配慮した郊外開発<計画されたコミュニティ>の一つとして世界的に知られ、「持続可能なコミュニティ設計の先駆的なモデル」として評価されている

Village Homesという「スマートコミュニティ」
Village Homesは、カリフォルニア州北部、サンフランシスコとサクラメントの間、ヨロ郡デイビス市に1981年に建設されたニュータウンで、敷地面積約 24.3ha(東西約325m、南北約800m)、住宅 戸数 240 戸の町です
Village Homesの2つの目標
1)生態学的に持続可能なコミュニティの建設
2)強いコミ ュニティの建設
このコミュニティは、建築家のコーベット夫妻が1960年代に計画を開始し、70〜80年代にかけて建設が進み1981年に完成しています
環境に配慮した住宅開発の初期モデルとして国際的な注目を集め、当時のフランスのミッテラン大統領も訪問しています
自然の中にあるエネルギーと天然資源、特に雨水と太陽エネルギーが巧みに活用され、アメリカ初のソーラーコミュニティ「America’s First Solar Community」と呼称され、<ecologically sustainable community>とされています

Village Homesの中心エリアでの主な移動手段は、徒歩と自転車とされていますが、スピードを出せないように曲がりくねった自動車専用道路もあり、街への出入り口付近にはあちこちに自動車用駐車スペースが設けられているとのことです
自転車専用道とつながる裏庭のような半公共空間や広場など公共空間が広く確保されコミュニティの醸成に役立っているとのこと
画像:Village Homes Wikipediaより
食料がほぼ自給でき、収穫物は住民であれば自由に採取する ことができる!
私有地内でも食物栽培は積極的で、消費する野菜の95%をまかなっている
住戸の95%に<太陽熱温水システム>が取り付けられ、夏季に 100%、
冬季でも80%の温水がまかなわれている
Village Homesについて
→「食」と地域コミュニティ形成を意識した都市・地域づくり( 国土交通省サイト内)
「Village Homes」は、今日ではカリフォルニア州で最も環境的、社会的、経済的に成功した開発プロジェクトの一つ、と認識されている
「ビレッジ・ホームズは、既存の規制に準拠し、従来の資金調達と建築手法を用いて開発されましたが、敷地設計と建築設計において数々の革新的な特徴を取り入れています。住宅は広大なオープンスペースに面しており、太陽熱温水器と太陽熱暖房、自然冷却システム、そして南北方向の配置によってエネルギーを節約しています。
開発地の大部分は、共同で維持管理されるコミュニティランドスケープに充てられており、その多くは食用植物で、果樹園、ブドウ畑、共有庭園、遊び場などが含まれています。また、ビレッジ・ホームズは、当時としては新しい郊外開発では異例であった開水路排水システムを採用し、試験運用を行いました。
当初は多くの人から高リスクなプロジェクトと見なされていたビレッジ・ホームズは、今日ではカリフォルニア州で最も環境的、社会的、経済的に成功した開発プロジェクトの一つ、すなわち「持続可能なコミュニティ設計の先駆的なモデル」と評価されています」
Eco-Suburbia: the case of Village Homesより引用(画像、テキスト)
ビレッジ・ホームズを視察した当時の長久手の視察団(組合の理事たち)は、ビレッジ・ホームズのまち作りは住民たちが主体となって進めていることに強い衝撃を受けたとのことです
Village Homesも長久手南部エリアにも隣接し優秀な大学のキャンパスがある

Village Homesに隣接するエリアには、カリフォルニア大学10校の一つカリフォルニア大学デービス校が建つ
デービス校は、農学・生命科学・環境科学・獣医学分野が世界的に評価される全米でもトップクラスの総合研究大学
他に、植物科学・動物科学・資源経済学・環境政策も看板分野。国際関係や日本語など人文社会学も充実

名古屋名東区との市境にある親鸞山の山頂から長久手南部、市が洞方面を望む

「Village Homes」内では、徒歩と自転車が主な移動手段のため、ガソリンスタンドは一箇所もありません
ユニクロは2010年、日進竹の山店が南部地区片平に移転(撮影は2025年秋)

長久手南部エリアは宅地造成が長久手市内でも最も新しいこともあり瀟洒な一戸建て建物が並びます
マンションやアパートを見かけることはほぼ無く、女性向けの賃貸マンションがあるだけのようです

長湫南部公園
市が洞エリアでは最も大きく整備されている公園。「ほとぎの里緑地」や名古屋市東端に広がる「猪高緑地」とは雑木林でつながっています。夏に催される市が洞地区の夏祭りはこの公園で開催されます

長湫南部公園は高台にあり市が洞の街並みを見晴らすことができます


市が洞にある「ほたるの里緑道」と「ほとぎの里」
長久手みなみ里山クラブの永続的な活動が緑豊かな地域を支えています

けやき通り
トヨタ博物館主催の「クラシックカーフェスティバル」で100数十台のクラシックかーが公道を走り抜けるルートにおなっています(撮影:2025年4月)